単純に「面白い」と括るには少し複雑な作品。つまらなくはないし、引き込まれる要素も多い。ただ、その展開にはどこか既視感があり、完全に新しい驚きとは言えなかった。もし“陰謀が現実だった”というルートで更なるひねりがあれば、より鮮烈な印象を残したかもしれない。 とはいえ、結末を知った今こそ、もう一度見返して細部を確かめたくなる。特に主人公の言動には、後から振り返ると精神的な病を想起させるような兆候も見えてきて、それが物語の捉え方に深みを与えている。何が現実で何が妄想か、その境界を探りたくなるような作品だった。