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公開 ・ 04.04 ・ ネタバレを含む
2025.04.03 (Thu)
「誰にも見えなくてもトイレのドアは閉めなさい」 誰にも見えなくても、ていねいに正しく生きること。 身だしなみを整えること。 誰にも声が届かなくても、届けようとしてみること。 私の生きる、ひとつ隣の世界にたった3人だけで暮らす彼女たちの背中が本当に眩しくて、腐らず正しく生きていても、それが"生"への切符にならないことが悔しかった。 年を重ねるたびに、もう2度と会えないけど、どうにかして会いたい人が増えて、近頃は、幽霊がいたらいいな、と思う。 「片思い世界」の明るく、毎日を大事に生きる3人の幽霊を見て、どうか私の大切な人たちも同じように生きていてほしいと思った。毎日、ご飯を食べて、好きな服を着て、ラジオを聴いたり、映画を観たり、髪もおろしてみたり、お団子にしてみたり、三つ編みにしてみたりしてくれていたら嬉しい。 人を憎むことすらままならないような年齢で3人きりになってしまった3人が、犯人を憎むことすら上手にできずに、優花ちゃんのお母さんに被さって守ろうとしたこと。 3人がひとつ歳を取るたびに身長を測ることで、自分たちも生きてるって思ってきたこと。 何かが上手くいくとハイタッチをして、寂しくなるときはぎゅっと肩を寄せ合って、そうやって小さな世界で生きてきたこと。 全部、犯人にも見せてやりたかった。 3人が犯人に人生を譲り渡すことなく、ちゃんと自分だけのものとして生きてきたことの救いがあった。 でも、それは私にとってだけの救いで、全部彼女たちの強さの上で成り立ったものだった。 私は、街で彼女たちとすれ違ったとしても、彼女たちが私の目の前で助けて!って叫んでいたとしても、彼女たちに気づくことはできない。 だけど、聞こうとしたいと思う。 街の雑踏、月明かりの下、レジの待ち列。 どこかに当たり前にいて、私と同じように笑ったり泣いたり、食べたり、眠ったりする、可哀想とかではなく、「当たり前」にそこにいる彼女たちを、私はずっと忘れることなく、いつも聞こうとしていたい。